HAPPY BIRTHDAY! ―完―「この辺りなら良いでしょう。」八戒が引率の先生の如く、皆を町外れの野原へ連れて来た。もちろん、バケツに水を用意している所は流石である。 「んじゃーこのぐらいからっv」桃花が小さめの花火を手に持つ。 シュワッ・・パチパチ・・・火を付けてもらい、花火の輝きに見入る。 「やっぱ、夏の風物詩だね~花火って。」うっとりと呟くが・・・長続きはしない幸せだった。 後ろで、悟空と悟浄が言い争っているのが聞こえる。 「も~?何、騒いでんのよ!?」桃花が振りむくと、両手一杯にネズミ花火を持った悟浄が、 「おらああ!クソ猿~っ!!」・・・・・・・・叫びながら、投げた・・・・・。 ―――――シュルルルッルスパパパパアンン「きゃあああっ!!!?」「うわあああっ!??」 辺り一面、火の海・・ではなく、ネズミ花火の大群である。凄まじい勢いに、 悟空は飛び跳ね、桃花は八戒に抱え上げられ、三蔵は・・・・やっぱり、跳んでいた(哀れ) 騒ぎが一段落する頃、濛々と立ちこめる花火の煙をかき分けて 「―――クソエロ河童っ!!死ねっ!!」三蔵が懐に手を入れようとしたのを 「三蔵っ!はいっ、コレッ!!」パシッと桃花が三蔵に手渡し、シュボッと火を付けたのは ・・・・・・・・・・拳銃型の花火だった。 シュ~・・パチパチパチ・・・・思わずいつもの構えた姿で、拳銃型の花火をしている三蔵の姿。 ――――――――悟浄と悟空は大爆笑・・八戒に至っては、しゃがみ込んで笑いを堪えている。 「きっ・・・貴様っ・・・!」プルプルと三蔵が震えている。 「あははは!!い~じゃん、せっかくなんだから!それに、悟浄君へのお仕置は、八戒ちゃんが。」 ―――――その言葉の通り、八戒が悟浄に詰め寄っている。 「悟浄?花火は人に向けてはイケナイって教わりませんでしたか?」 「エッ?いや~・・危険じゃなかっただろ?ただのネズミ花火じゃん!」 その言葉を聞いて、八戒のモノクルが光った。 「・・では。花火が危険だと、教えて上げましょうv」ニッコリ微笑みながら、両手を上げた。 「・・・っておい!気っ・・気功じゃねーかっ!?」八戒の両手から、無数の小さな気が出ている。 「キレイでしょう?」その途端、無数の気が、悟浄めがけて放たれる。 ヒューンッヒューンッ・・ドカーンッドカーンッ・・・・雨あられの様に降り注ぐ気を避けつつ、 「止めろ~っ!!止めてくれ~っ!!」悟浄の叫び声が、夜空に響く。 その様子を、悟空が笑い転げながら見ている。 「た~まや~・・・。」桃花が呟いた。 「フン。アホらしい・・。」すっかり怒気を削がれた三蔵が、マルボロを銜える。 「・・・三蔵達の誕生日って、いつ?」 「ああ?こんなバカげた事、ヤルっていうのか?」無愛想な三蔵の言葉に苦笑しつつ、 「だって、やりたいんだよ。三蔵達が生まれてくれなかったら、逢えなかったんだし。」 「迷惑な運命だな。」紫煙を吐き出す。 「んな、可愛くないこと言ってるから、ハゲんのよ!?」・・・禁句を言ったらしい。 三蔵の顔色が変わった。「・・・・・・・・・・俺も、花火をヤルか。」ジッポを取り出す。 「・・・・・さささささささささ三蔵っっっ!!?」三蔵がロケット花火に火を付け始めた。しかも無数に。 ―――――――――桃花が逃げ出す。「・・逃がさねぇ。」ロケットが放たれた。 「きゃああっ!!」「桃花?・・って、うわあああっ!!?」悟空が巻き添えを喰う。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・約、5分後。 またしても濛々と辺りを包む、花火の煙。うっすらと人影が見える。 「・・・生きてたか。」平然と凄いことを言う三蔵。 「三蔵・・・。貴方、桃花をナメてませんか?」嫌な予感が八戒を襲う。 「あん?どう言う・・・バチバチバチッッ――――三蔵が言葉を切った。『・・この音?』 「さ~ん~ぞ~お~・・・・。」徐々に煙が晴れ、桃花の姿がうっすらと見えてきた。 思わず八戒が後ずさりした。『・・・嫌な予感が現実に・・・。』 「・・・!?てめっ・・!!」流石の三蔵も青くなった。 桃花が(またもや)無数の打ち上げ花火を、三蔵にロックオンvしていた。 「うわっはははははは!!死ね~っ!!!」三蔵に向けて放たれる打ち上げ花火。 しかし、三蔵は愛用の銃で、迫ってくるロケット花火を撃ち落とす。 ドゴーンッドゴーンッドゴーンッ・・・ニヤリと三蔵が笑みを浮かべた・・・・・が。 シュウウウゥゥゥッッッッ・・・パチパチッ・・バチッ・・アチコチで不穏な音がする。 (先程、悟浄が逃げ回った時に、アチコチに花火をバラまいていたらしい。) 「いっ・・・引火、したようですっ・・・!逃げっ・・・」八戒の言葉も虚しく――――――― ――――夏の夜空に、盛大な爆音が響き渡った――― 翌朝・・・・黒こげの5人組が、町を去ったそうな。 後日・・・「もぉ・・・誕生日なんか祝わないでイイっ・・。」と、桃花は言ったのだが。 来年以降も、桃花の誕生日には“花火大会”が催されてしまう事になる――――――。 完 ジャンル別一覧
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